「ところで理樹よう」
「なに? 真人?」
「結局、理樹は ?」
ゲームをして遊んでいる最中。
真人が振ってきたその質問を、一瞬理解できなかった。
僕の部屋にいるのは恭介以外の男幼馴染二人。
恭介達が朋也さんの学校に出かけたから、今日の練習は中止だった。
しばらく将棋をしていたんだけど、二時間ぐらい遊んでいたら真人が限界をむかえて……
今は『三人同時参加のオセロ』なんていう、ある意味挑戦的な遊びをしている。
オセロのコマは白と黒と白黒しましま。
色をしましまに塗る作業がとても大変だったんだけど、ゲーム自体はなかなか白熱している。
騙し騙され、裏切り裏切られ…… うん、たった数時間で色々な事を学んだ気がするよ。
遊び始めた頃の盤面は、正に混沌としか言いようが無かった。
僕が白、謙吾が黒、真人がしましま。
白が優勢かと思ったら、黒が反撃してきて……いつの間にか、しましまがコーナーを取っている。
…かと思いきや、合計数は白が一番だったり。
「なんだよ…どこに打っても理樹に取り返されるじゃねえかっ!?」
「うん、真人はもう少し全体を見たほうがいいよ?」
「そう言う理樹も、もう一手先を読んだほうが良かったな」
「うそっ! どうして謙吾がそんなところに打つのさっ!?」
「この一手が生きるのは……もう一巡してからだ…」
「どうせ俺は今しか見ていませんですーーっ! ごめんなさいでしたーーっ!」
「!? 待て待て、ちょっと待て真人! お前がそこに打ったら…」
「……はい、コーナー取りだね。 ごめん謙吾」
「…不覚…」
こんな感じでゲームは続いていたんだけど…
真人の質問が出たきっかけはなんだったんだろう?
……あ。 確か途中で…
「なぁ、もしかして俺達…とんでもないゲームを作り出しちまったんじゃねえか?」
「とんでもない、という部分には全面的に同意しよう。 …最後の一手まで勝敗が解らないオセロとはな…」
「っていうかさ、既にオセロじゃないよね? これ」
こんな話題になったんだ。
「でもさ、みんなで遊んだらもっと楽しいだろうね」
「今日は結構な人数があっちに出向いているからな… またの機会を待つとしよう」
「今こっちにいるのはクー公か?」
「うん。 後は二木さんと笹瀬川さんだね」
「気が付けばあの二人とも時間を共にする機会が増えたな」
謙吾の言うとおりだ。
先月のケイドロが発端だったんだと思う。
二木さんも笹瀬川さんも、時間が合えば僕達と遊んでいる事が多くなった。
「でもなんだかよ、クー公が参加するとしたら…なんかいじめてるみたいな展開になりそうじゃねえか?」
あ、それなんとなく分かるかも。 二種類のコマに囲まれて、わふーわふー言ってそう。
「二木さんだったら…」
「遊ぶ前に罵倒されそうな気がするぞ?」
「笹瀬川さんは?」
「……ノーコメントだ」
真人に謙吾。 それぞれ苦手意識があるみたいだね。
「神北だったらどうだ?」
「小毬さんか…… 小毬さんもいっぱいいっぱいになってそうだね」
「じゃあ理樹、三枝なんてどうよ?」
「葉留佳さん… 盤面をひっくり返しそう…」
「それは言えてるな」
僕の答えに謙吾が含み笑いを返す。
「来ヶ谷さんと西園さんが一緒の相手だったら…」
「「絶対に謀られるな」」
二人とも、妙に息が合ってるね?
「恭介なら難なくこなしそうだけどね」
「あいつは遊びに関しては、天性の才能があるからな」
「ただの馬鹿って言うんじゃね?」
恭介の事を話したら、最後に鈴の姿が頭に浮かんだ。
「鈴は…どうだろう…?」
「んー、鈴か…」
「むぅ…」
やっぱり混乱して、威嚇しはじめるんだろうか?
でも、逆に僕達がびっくりするぐらいスムーズにこなしそうな気も……
そんな思考の波に呑まれて時だったんだ。
真人が不意に僕を見つめて、こんな事を言ってきたのは。
「ところで理樹よう」
「なに? 真人?」
「結局、理樹は誰と付き合ってんだ?」
「……?」
?
……
………っ!?
「え…ええっ!?」
真人の質問の意味を理解した瞬間、頭の中が真っ白になってしまった。