「あ、謙吾に小毬さん。 結構遅かったね?」

「悪い、ちょっとな」

「理樹くんただいま~」

 

 結局謙吾達が戻ってきたのは、恭介と朋也さんの寸劇(?)が終わった後だった。

 結構長い間、外にいたみたいだけど……

 

「今丁度終わったんだよ、ホスト役の二人が演じた出し物が。 ……恭介が朋也さんと……うん。」

 

 出し物が終わってしまった事を伝えようとしたんだけど、内容に関しては自然と口籠ってしまう。

 だって、ねえ?

 アレには……苦笑いで答えるしか出来ないじゃないか。

 ……西園さん、輝いていたなぁ。

 恭介に朋也さん、本当にお疲れ様。

CLANALI3  第二十一話

「……なんだ? 一体何をやらかしたんだあいつは」

「あ、あはは」

 

 なんて説明したらいいんだろう?

 えっと、ナイスホストな二人の愛? プロデューサー西園本領発揮? 兄貴的二人のえくすたしー?

 ……なんだろう。 どれもが的確で、どれもがおかしいような。

 

「ふっふっふー、謙吾くんそれはねー」

「小毬?」

「耽美、なんだよー?」

「は?」

「練習の時もすごかったんだからっ」

 

 僕が言葉に詰まっていると、代わりに小毬さんがほんわかした笑顔で答えてくれた。

 そっか。 小毬さんも見れなかったみたいだけど、一緒に準備していたんだから知ってる筈だよね。

 

「ああ、確かに練習の時から素晴らしかったな。 あの二人のコンビネーションは」

「ゆいちゃん」

「だがな小毬君。 今日の本番も至高のひと時だったのだぞ? まったく、見逃すとはもったいない」

 

 そんな事を言いながら来ヶ谷さんが会話に参加してきた。

 

「しかしながら、おねーさんとしては可愛らしい女の子の方が琴線に触れるのだがね」

 

 とかなんとか言いながらも、随分と満足そうな顔してるよね?

 そんなに堪能してたんだ、来ヶ谷さんも。

 ……けど、謙吾の一言で、

 

「まぁ、そう小毬をいじめるな来ヶ谷。 遅れたのは俺の責任だ。 小毬だって好き好んで見逃したわけでは、」

「む? 今、何と言ったのだ? 謙吾少年」

 

 話の方向性が、ぐるっと変わった。

 

「ん? だから遅れた責任は俺にあると、」

「そんな事はどうでもいい」

 

 あ、どうでもいいんだ。

 

「小毬、か……なるほどな。 謙吾少年よ、聖夜のひとときしっぽりムフフという訳か」

「何を言っている?」

「……?」

 

 来ヶ谷さんの指摘を聞いても、謙吾の顔には疑問が浮かんだままだった。

 もちろん小毬さんも。

 

「これは由々しき事態だ。 少年もそうは思わないかね?」

「えっと、僕からは何も」

「……ふむ、直接聞いた方が早そうだな」

 

 その小毬さんを見る目、獲物を狙う眼つきだよねそれ?

 

「何もしないさ、何もな。 小毬くん、ちょっとおねーさんとお話をしてくれないか? 心配する事はないさ、簡単な質問だ」

「なーに? ゆいちゃん?」

 

 小毬さんの手を引いて、来ヶ谷さんは資料室の隅へ……

 

「小毬君、────」

「えとね、────」

「───、なら君は──」

「───だから、────」

「そうかね? だとすれば君は────」

 

 二人の会話は殆ど聞き取れない。

 それじゃ、僕としても気になる事を確かめておこうかな。

 

「謙吾、もしかして外にいたんじゃないの? なにか温かい飲み物……コーヒーでも貰おうよ」

「それはいいな。 宮沢の淹れたコーヒーだとしたら、更に魅力的だ」

「え? 自分で淹れるの?」

「そんなわけあるかっ。 そもそも会話としておかしいだろう? この学校の宮沢だ」

「ああ、有紀寧さんの事だね?」

「もちろんだ」

 

 んー。

 有紀寧さんの事は今迄と同じ呼び方なんだね。

 自分と同じ苗字で紛らわしい筈なのに。

 女の人に対しては上の名前で呼ぶっていう謙吾のスタイルに変わりはないんだ。

 だとしたら、さっきのは……

 

「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 ぶっ。

 とんでもない叫び声が響き渡った。

 勿論というか……その声の主は小毬さんなんだけど。

 きっと……いや、確実に来ヶ谷さんの仕業だ。

 

「うわぁぁぁぁぁん。 なんかいろいろと話しちゃったよ~~~。 ゆいちゃんの誘導尋問、怖いよぉぉぉぉ」

 

 ……何をどこまで言わされたんだろう。

 ?

 謙吾?

 あ~あ。 固まっちゃってるよ、完全に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、と。

 僕ももう少し食べ物を貰ってこようかな。

 まだまだ料理は沢山揃ってる。

 取り皿を持ち、テーブルの側へ近寄ると……

 

「あ、あのっ、リキ!」

「……クド」

 

 色とりどりの料理を盛った小皿を手にして、クドが僕の隣に立っていた。

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