「次の休みだけど、みんな時間はあるか?」
夕食後、恭介がいつものメンバーを集めて質問してきた。
「お? なんだ? なにかやんのか?」
「ほう? 来週か…」
さっそく真人と謙吾が食いつく。
「日曜日ですか…」
「? 西園は予定アリか?」
「いえ、予定といえば予定ですが…。 そもそも今度は何を企画したのですか?」
「さぁ、なんだろうな?」
って、え? なんで恭介が知らないの?
「いや、俺は伝言を受けただけだからな。 なあ鈴」
鈴?
「? 今回のは鈴が考えたの?」
僕はびっくりして鈴に顔を向ける。
「違う。 あいつから言われた」
「あいつ?」
「野球をした中ボスだ」
中ボスって、……古河さん?
そっか。 今日鈴は…
「小毬さんと渚さんの家に遊びに行ったんだっけ?」
「あとさーちゃんも一緒にね」
小毬さんが付け加える……さーちゃん?
「そうだ。 ホットケーキおいしかったぞ。 ささみの作ったのが一番おいしかった。 不思議だ」
「ちょっと棗鈴っ!? 不思議とはなんですか不思議とは!」
笹瀬川さんが通りがかりついでに話題に入ってきた。
「あ、さーちゃん!」
そっか、さーちゃんって笹瀬川さんの事か。
「第一あなたは食べるばかりで全然手伝いもせずにもっと甘くだの焼きすぎだのと…」
「そうだ!」
恭介が笹瀬川さんの手を掴む。
「きゃっ! な、なんですのっ!」
「笹瀬川。 お前も日曜日は来いよ、なっ!」
「てっ手を…」
「古河さんに会ったんだろ? 俺達と一緒に遊ぼうぜ!」
「だっだからこの手をっ……」
「恭介氏、いきなり婦人の手を掴むのはどうかと思うぞ?」
「え? ああ、悪い」
恭介は来ヶ谷さんの指摘を聞いて、ようやく手を離した。
「まったく! レディに対しての配慮が欠けているのではなくて?」
笹瀬川さんはちょっぴりご立腹だ。
「すまないな……恭介の事、許してやってくれないか?」
「はっはい! もちろんですわっ!」
謙吾の一言であっさり了承。
「恭介氏、少しは女心というものを勉強したらどうだね?」
「そうですっ! 恭介さんにはお勉強が必要ですっ!」
来ヶ谷さんとクドが恭介を叱っている。
「あまりに不勉強でいるならば、藤林女史に報告しなければな」
「藤林…? 杏の事か? なんでまた?」
「「「……」」」
恭介ってほんとに…。
「藤林杏ってこの前の奴か? どう言う事だよ、なぁ理樹?」
真人も同類だったね。
「えっとさ、恭介さんって杏ちゃんと付き合ってるんでショ?」
直球ど真ん中な質問をする葉留佳さん。
「? いいや?」
「連絡を取り合っているのではないのかね?」
「なんだよ、どうして来ヶ谷がそんな事を知ってんだ? んー確かに毎日連絡してるな」
「「「……毎日……」」」
「電話だったりメールだったり…。 なんだよ? どうかしたのか?」
みんな口を開けたままだったり、顔を赤らめていたりする。
僕もだけど、リアクションが取れない空気が漂ってるよ……。
「なんだよお前ら? 真人、わかるか?」
「いや? 筋肉が足りてねえんじゃねえのか?」
いいけどさ、別に……。
「でだ、実は古河さんからもう一つ依頼を受けているんだ。 鈴、頼む」
「あたしか?」
鈴はなにかを思い出すように目を瞑って、
「…あー、『学校に帰ったらお前の兄貴に伝えな』 『? あの馬鹿にか? なんだ?』」
「そこは飛ばしていいぞ、最後だ」
「そうか? …『頼んだぞ』 『わかった』」
なにを?
「もうちょい巻き戻してもう一回」
「難しいな。 …『二木 佳奈多をなんとかして誘ってくれねえか?』 『あいつをか?』」
二木さんを?
「ありゃりゃ? なんであのおじさんがお姉ちゃんの事を誘うの?」
葉留佳さんは首をかしげている。
「実はね」
小毬さんだ。
「今日渚ちゃんのおうちに行ったら二木さんが可愛い小さな女の子と一緒にいたの」
へえ、意外って言ったら失礼だけど…。
「そこでね……」