「こっちだこっち! 久々だなガキンチョ共っ!」
公園に到着した秋生は恭介達を発見し、大声で呼びかけた。
「古河さんもお元気そうで!」
応じるように恭介が声を張り上げる。
「ったり前だろ? 俺様からかっこよさを取ったら何が残るってんだ!」
誰もそんな話題は振っていない。
集合したメンバーは、双方合わせて総勢23人。
はっきり言って大所帯だ。
新規のメンバーもいたが、既知・初見に関係無く最初に飛び出してきたのは…
「佳奈多さんがいますっ! 風子、びっくりサプライズですっ!」
その小さな人影は、一目散に佳奈多の元へと駆け寄って行った。
「ちょっと風子っ」
「うう~~んっ! 一週間ぶりの佳奈多さんですっ!」
風子は佳奈多に抱きつき、幸せを噛み締めている。
とは言え佳奈多も無理に振りほどく事は出来ず、風子の成すがままにされていた。
「おー。 お姉ちゃんが別人みたいですヨー」
「わふーっ! わたしも混ぜてくださいっ!」
「っと!? クドリャフカっ!」
クドは、わふー、という効果音(?)と共に、空いている佳奈多の背中へと飛びついた。
「……これは予想外だな少年」
「うん、この目で見るまで信じられなかったけど…」
来ヶ谷と理樹はその光景を見て、溜息混じりに感想を洩らす。
「二木君が…」
「二木さんが…」
「ぺったんこサンドイッチを編み出すとは」
「ぺったんこ…ってえええっ!? なにそれっ!? 来ヶ谷さんっ?」
「む? 見ての通りだぞ? 『ろりぷに』による前後同時抱擁(しかも受け)の事だが?」
「そんな新出単語を『何を言っているのだね少年は?』みたいに語らないでよっ!」
「…それは、ぐへへ、僕もそのサンドイッチの具になりたいなぁ…という意味かね?」
「違うよっ! 恭介じゃないんだからっ!」
濡れ衣をかけられそうになった理樹は、ついつい自分の中にあった『ろり好き=恭介』という
スケープゴートを言い放ってしまった。
「少年っそれはっ!」
「え?」
来ヶ谷が理樹の意見を押し止める前に、その一言を聞きつけてしまった人物が一人……
「ふ~~ん、そうなんだ~~♪」
えらく明るい声とは裏腹に、ものすごいプレッシャーを発して笑顔を見せる。
「……おねーさんは知らないからな? 少年」
「ふ、ふじばやし…きょう、さん?」
「…」
「「…」」
「……あはっ♪」
その笑顔が怖い。
「「……」」
「さてと、恭介~♪」
「ん? どうした杏?」
自分の名前を呼ばれ、恭介が理樹達に振り返る。
「違うから違うから違うからっ!」
必死に杏を止める理樹。
「とりあえず聞いてよっ! それと恭介っ朋也さんが呼んでたよっ! 行ってあげてっ!」
「そうか?」
理樹の言葉通りに、恭介は朋也の元に向かっていった。
「だからね藤林さん? さっきのは違うからっ」
「何が? ん♪」
「……この迫力、いや、憎悪…か? この類の感情、私とはまた違うな…」
来ヶ谷はそんな事に感心してる。
「だからさっきのは言葉のあやで、いくら恭介自身がそんな事を言ってたとしても、」
「ふ~ん…言ったんだ、あいつ」
「いやいやいやっ! それこそが僕の…って来ヶ谷さんも頷いてないでさっ!」
「少年…、乗り越えるんだ……この過酷を」
「いやいやいやっ! つっこんでる余裕は無いからね今っ!」
「大丈夫、大丈夫…本人に聞いてくるから」
「ちょっと藤林さんっ!? その手にある国語辞典は何っ!」
…右に左にと、大活躍な理樹だった……
「呼んだか? 岡崎」
恭介は朋也の前にやってきた。
「いや、別に棗を呼んだ覚えは……っとそうそう、またオッサンの思いつきにつき合わせて悪いな」
「なんだよそりゃ? これでも今日を楽しみにしてたんだ。
俺達は来たくてここに来てるんだからそんな気遣いはいらないさ」
恭介は言い切る。
まったく迷いの無い笑顔と共に。
朋也はその顔を見て少しだけ驚くが、納得だとでも言わんばかりの笑顔で返答する。
「そうだな。 もうお前達に遠慮はいらないか」
「そういうことだ」
恭介と朋也。
ただそれだけの交流でお互いに一歩、何かが近づいていた。
「棗さん×岡崎さん…いえ、ここはあえて朋也さんと呼称しましょう」
「???」
「棗さん×朋也さん……、朋也さん×棗さん……」
「???」
「どちらもありです。 これはなかなかの組み合わせですね…」
「???」
「ご理解頂けましたでしょうか?」
「……とっても、とってもむずかしいの」
西園はことみに対し、『特殊な何か』をレクチャーしていた……