「理樹、準備は出来たのか?」

「うん、急ごうか真人。 もうみんな揃ってる頃だよ」

 

 約束の日の朝、僕は真人と部屋を出る。

 今日は朝食をとってから出発する手筈になっていた。

 

「今回はいつものメンバーに加えて笹瀬川と二木がいるんだっけか」

「随分大人数になったよね」 

「いつもみたいな車じゃ乗りきれねえよな」

「真人と謙吾が走って追いかけてくればいいんじゃない?」

「お、なるほどな。 って理樹、それは流石に洒落になってなくねえか?」

 そんな他愛も無い話をしながら学食に着くと、

 

「遅いわよ、直枝理樹」

 

 早速二木さんのお叱りが僕達に突き刺さってきた。

CLANALI2  第十三話

「みんな、お待たせ」

「なんだよ? 既に俺と理樹の分まで朝飯が用意されてるじゃねえか。 なんで? 俺、王様?」

 真人の言う様に僕達の分の朝食がいつもの席に置いてある。

 それにみんな自分達の分には手をつけず、僕達を待っていてくれたみたいだ。

「なんでも団体行動をする時には最初が肝心とのことだ」

 あ、その恭介の言葉、なんかちょっと嬉しい。

「ありがとう恭介」

「理樹、礼ならそいつに言ってやれ」

 恭介の視線の先には……二木さん?

「ああ、発案は二木だ。 しかも誰よりも早くこの席について待っていたんだぞ」

「なんとも可愛らしいではないか。 二木君はよほど今日が待ち遠しかったと見える」

「そんな事でお礼なんて結構です。 それと来ヶ谷さん? ご自身の妄想を投げかけないで下さい」

「やははー。 お姉ちゃんってばかわいいかわいい」

「葉留佳もいい加減な事を言うのはよしなさい」

「そっかっ! 二木も今日が楽しみでオギオギしてたって事かよ!」

「貴方は日本語で話しなさい」

 二木さんって意外とつっこみ早いよね。

「聞いてくださいリキ! 佳奈多さん、きのうの夜は私と一緒のベットで寝てくれましたっ!」

「ちょっとクドリャフカ?」

 突然のクド暴露。

 そんなに嬉しかったんだね…って!、クドと二木さんが同じベット……

「久しぶりだったのでとてもしあわせでした! あーいふぃーるはぴねすでしたーっ」

 やっぱりクドは二木さんに、ぎゅっと抱きついて寝たのかな?

 それとも二木さんがクドに、ぎゅっと…

「直枝理樹、脳内セクハラはやめなさい。 それに来ヶ谷さん、その笑みは不愉快です。

  最後にクドリャフカ、今度からはどんなに甘えてきても一人で寝なさい」

「わふっ! そんな大岡裁き、ご無体な~」

「…仕方が無い。 少年、えろい想像を働かせるのは後にしようか」

「しないよっ! そもそもそんな想像してないよっ!」

 

 ごめんなさい。 ちょっとしてました…

 

 

 

 

「みっ宮沢さん!」

「ん? なんだ?」

「ちょ…朝食は和食と洋食のどちらがお好きですかっ?」

「そうだな、やはり和食だな」

「わっ和食ですねっ。 わかりましたわっ! (ぐっ!)」

 

「みっ宮沢さん!」

「なんだ?」

「た、たたた玉子焼きは甘いのと出汁が効いているのと、どちらがお好みですかっ?」

「うむ…どちらも食べられるが、しいて言うならば甘くない方が食が進むな」

「はっはい! かしこまりましたわっ! (ぐっ!)」

 

 …なんか笹瀬川さん、謙吾のリサーチに一生懸命だね…

「? なんだ? お前、食べ物が好きなのか?」

 鈴、ちょっと違うと思う。

「そそそそそうですわっ! 最近料理に凝っているだけですのよ!」

「そうか。 うん、たしかにささみのホットケーキはうまかったな」

「ふ、ふんっ! 当然ですわっ!」

 その会話を聞いた謙吾が何気なく答える。

「ほう、料理が得意だとは知らなかったな」

「みっ宮沢さんっ!?」

「やはり女性は料理が……」

 あ、笹瀬川さん、あの様子じゃもう謙吾の話は聞こえて無いよね。

 謙吾の問いをどう脳内変換したのかはわからないけど、顔を真っ赤にして固まっちゃってるよ…… 

 

 

「鈴ちゃん鈴ちゃん」

 その横では小毬さんが鈴に小声で話しかけている。

「邪魔しちゃ駄目だよ? どきどきりさーち大作戦なんだからっ」

「りさーち? あー、あれな。」

「ほぇ~。 鈴ちゃんも気付いてたの?」

「あー、りさーちな。 あの時はきょーすけがあまりにえろくてびっくりだった」

「ええぇぇっ!? 一体どんな事を調べたの~っ!?」

 鈴? 知らない事は正直に言わないと雪達磨式に大変な事になるよ? 今回は特に恭介が。

 

 

 

 

 

 

 

 

「全員携帯は持ったか?」

 朝食も終わり一息ついたあと、恭介がみんな問いかけた。

 なんでも携帯は今日の必須アイテムらしい。

「恭介さん、今日は電車での移動なんですよね? どちらで集合なのでしょう?」

 西園さんが質問する。

「ああ、なんでも広い場所が必要らしいんでな。 ○○臨海公園ってところで合流だ」

 臨海公園か…行ったことないな。

「…大体電車で30分という距離ですね」

「あっちのグループも電車らしい。 あっちはあっちで人数が増えたみたいだしな」

「まるで遠足…みたいですね」

「ははっそうだな!」

 

 

 頃合いを見て声をかける。

「それじゃみんな、そろそろ出発しようか?」

「風子ちゃんに会うのが楽しみですヨ!」

「…考えてみれば、風子とあなたを会わせるとより手がかかりそうね…」

「やーやーやー、お褒めに預かり光栄ですナー」

「その発想、どうやったら出てくるのよ…」

 

 

 ……あの人達に会うのも、一ヶ月ぶりだ……

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