「理樹、準備は出来たのか?」
「うん、急ごうか真人。 もうみんな揃ってる頃だよ」
約束の日の朝、僕は真人と部屋を出る。
今日は朝食をとってから出発する手筈になっていた。
「今回はいつものメンバーに加えて笹瀬川と二木がいるんだっけか」
「随分大人数になったよね」
「いつもみたいな車じゃ乗りきれねえよな」
「真人と謙吾が走って追いかけてくればいいんじゃない?」
「お、なるほどな。 って理樹、それは流石に洒落になってなくねえか?」
そんな他愛も無い話をしながら学食に着くと、
「遅いわよ、直枝理樹」
早速二木さんのお叱りが僕達に突き刺さってきた。
「みんな、お待たせ」
「なんだよ? 既に俺と理樹の分まで朝飯が用意されてるじゃねえか。 なんで? 俺、王様?」
真人の言う様に僕達の分の朝食がいつもの席に置いてある。
それにみんな自分達の分には手をつけず、僕達を待っていてくれたみたいだ。
「なんでも団体行動をする時には最初が肝心とのことだ」
あ、その恭介の言葉、なんかちょっと嬉しい。
「ありがとう恭介」
「理樹、礼ならそいつに言ってやれ」
恭介の視線の先には……二木さん?
「ああ、発案は二木だ。 しかも誰よりも早くこの席について待っていたんだぞ」
「なんとも可愛らしいではないか。 二木君はよほど今日が待ち遠しかったと見える」
「そんな事でお礼なんて結構です。 それと来ヶ谷さん? ご自身の妄想を投げかけないで下さい」
「やははー。 お姉ちゃんってばかわいいかわいい」
「葉留佳もいい加減な事を言うのはよしなさい」
「そっかっ! 二木も今日が楽しみでオギオギしてたって事かよ!」
「貴方は日本語で話しなさい」
二木さんって意外とつっこみ早いよね。
「聞いてくださいリキ! 佳奈多さん、きのうの夜は私と一緒のベットで寝てくれましたっ!」
「ちょっとクドリャフカ?」
突然のクド暴露。
そんなに嬉しかったんだね…って!、クドと二木さんが同じベット……
「久しぶりだったのでとてもしあわせでした! あーいふぃーるはぴねすでしたーっ」
やっぱりクドは二木さんに、ぎゅっと抱きついて寝たのかな?
それとも二木さんがクドに、ぎゅっと…
「直枝理樹、脳内セクハラはやめなさい。 それに来ヶ谷さん、その笑みは不愉快です。
最後にクドリャフカ、今度からはどんなに甘えてきても一人で寝なさい」
「わふっ! そんな大岡裁き、ご無体な~」
「…仕方が無い。 少年、えろい想像を働かせるのは後にしようか」
「しないよっ! そもそもそんな想像してないよっ!」
ごめんなさい。 ちょっとしてました…
「みっ宮沢さん!」
「ん? なんだ?」
「ちょ…朝食は和食と洋食のどちらがお好きですかっ?」
「そうだな、やはり和食だな」
「わっ和食ですねっ。 わかりましたわっ! (ぐっ!)」
「みっ宮沢さん!」
「なんだ?」
「た、たたた玉子焼きは甘いのと出汁が効いているのと、どちらがお好みですかっ?」
「うむ…どちらも食べられるが、しいて言うならば甘くない方が食が進むな」
「はっはい! かしこまりましたわっ! (ぐっ!)」
…なんか笹瀬川さん、謙吾のリサーチに一生懸命だね…
「? なんだ? お前、食べ物が好きなのか?」
鈴、ちょっと違うと思う。
「そそそそそうですわっ! 最近料理に凝っているだけですのよ!」
「そうか。 うん、たしかにささみのホットケーキはうまかったな」
「ふ、ふんっ! 当然ですわっ!」
その会話を聞いた謙吾が何気なく答える。
「ほう、料理が得意だとは知らなかったな」
「みっ宮沢さんっ!?」
「やはり女性は料理が……」
あ、笹瀬川さん、あの様子じゃもう謙吾の話は聞こえて無いよね。
謙吾の問いをどう脳内変換したのかはわからないけど、顔を真っ赤にして固まっちゃってるよ……
「鈴ちゃん鈴ちゃん」
その横では小毬さんが鈴に小声で話しかけている。
「邪魔しちゃ駄目だよ? どきどきりさーち大作戦なんだからっ」
「りさーち? あー、あれな。」
「ほぇ~。 鈴ちゃんも気付いてたの?」
「あー、りさーちな。 あの時はきょーすけがあまりにえろくてびっくりだった」
「ええぇぇっ!? 一体どんな事を調べたの~っ!?」
鈴? 知らない事は正直に言わないと雪達磨式に大変な事になるよ? 今回は特に恭介が。
「全員携帯は持ったか?」
朝食も終わり一息ついたあと、恭介がみんな問いかけた。
なんでも携帯は今日の必須アイテムらしい。
「恭介さん、今日は電車での移動なんですよね? どちらで集合なのでしょう?」
西園さんが質問する。
「ああ、なんでも広い場所が必要らしいんでな。 ○○臨海公園ってところで合流だ」
臨海公園か…行ったことないな。
「…大体電車で30分という距離ですね」
「あっちのグループも電車らしい。 あっちはあっちで人数が増えたみたいだしな」
「まるで遠足…みたいですね」
「ははっそうだな!」
頃合いを見て声をかける。
「それじゃみんな、そろそろ出発しようか?」
「風子ちゃんに会うのが楽しみですヨ!」
「…考えてみれば、風子とあなたを会わせるとより手がかかりそうね…」
「やーやーやー、お褒めに預かり光栄ですナー」
「その発想、どうやったら出てくるのよ…」
……あの人達に会うのも、一ヶ月ぶりだ……