「ところでオッサン」

 アホアホトライアングルから何とか抜け出して、オッサンに問いかける。

 

 …関係ないが、傍から見れば俺も含めてアホアホスクエアになるのか…? 

 大丈夫だ。 俺はまだ、傍観者のままでいられている筈だ…。

 

「…来週の件、もう少し人を増やしても平気か?」

「ああ、多けりゃ多いほど楽しめるさ。 なんだ? いつもの奴らの他に誘うのか?」 

「昼間に芳野さんと偶然会ってさ、しばらくあの家族とは遊んでないなって」

「そうですね、わたしも伊吹先生やふぅちゃんと遊びたいです」

「おっ、小僧からそんな言葉が出てくるとはな。 珍しくいい意見だ! よし! 電話かけてみな」

「朋也くん、どうぞ。 伊吹先生のおうちの番号です」

「サンキュ、渚」

CLANALI2  第十話

「(もしもし、風子です)」

 電話取ったら家の苗字から答えろよ。

「…あー、俺だ。 オレオレ」

「(? どなたでしょうか……っもしかしてヒトデさんですかっ!)」

 ヒトデかよ。

「そうそう、俺ヒトデ。 実は事故っちゃってさ、大変なんだよ今」

「(大変ですっ! 風子どうしたらいいですかっ!)」

「そうだな…次の日曜日、渚と一緒に遊んでくれ」

「(意味わかりませんが風子、渚さん好きですので了解です。 なにがあっても時間を作りましょう)」

「約束な」

「(はい! 約束です!)」

「それと芳野さん…って公子さんもか。 あー、祐介さんに代ってくれるか?」

「(ユウスケさんですか? ……)」

 ………

 

「(ヒトデの名を騙るとは…何者だ? おかしな勧誘なら…)」

「こんばんは、岡崎っす」

「(なんだ岡崎か……。 風子はヒトデが電話をかけてきたって完全に信じてるぞ…)」

「まぁ夢を見せてやっておいて下さい。 ところで芳野さん、来週の日曜はお暇ですか?」

「(唐突だな…。 お前、来週も暇なのか?)」

「いえ、オッサンが遊びを企画したんですけど、よかったらみんなで参加してくれませんか?」

「(古河さんが…? ん…、そうだな…)」

「公子さんや風子も一緒に」

「(…わかった。 彼女達には俺から話しておく、参加させてもらおう)」

「ありがとうございます芳野さん」

「(いや、俺もしばらく家族サービスが出来ていなかったからな…。 丁度良い機会だ)」

「家族サービス…ですか…?」

 芳野さんの家族サービス……

 

 

 

「ひゃっほーうっ! 芳野家、最高ーーっ!」

 芳野さんがマイクを掴み、上半身裸で絶叫する。

「祐くん、頑張って!」

 公子さんはキーボードを弾きながら嬉しそうに微笑む。

「ユウスケさん! 最高です! ヒトデ祭ですっ!」

 その横でヒトデを観客席に投げている風子。

「「「よっしーの! よっしーの! よっしーの!!」」」

 ステージに響く芳野さんの歌声、轟くMC、飛び交うヒトデ達!

 

 会場が芳野家の想いで一体化する!

 

 

 

「怖ぇ~~~~~~~」

「(? 岡崎?)」

「あ、いえいえ、それじゃ詳しい事は後日連絡するんで」

「(ああ、頼む)」

「はい、それじゃあ」

 

 

 

 

「誘えたのか?」

「ああ、公子さんや風子も来てくれるみたいだ」

「なら小僧、風子が来るって事を棗に伝えてやれ」

「なんでだよ?」

 オッサンの意図がわからない。

「風子と二木は仲良かったからな。 あっちの勧誘の力になるだろうが」

 なるほどな。

「でも俺、あいつらの連絡先なんて知らないぞ?」

 三人を見渡すが、

「「「……」」」

 誰も知らないのかよ。

「お前、今日はどうやって連絡を取り合ったんだ?」

「小毬さんから家の電話に連絡が来ただけでしたので…」

「仕方ないな……」

 俺は受話器を握る。

「朋也くん、どちらにかけるんですか?」

「……杏なら知ってんだろ」

 

 

 

 

 

 

「で? わかったのか連絡先は」

「杏が直接あいつに伝えてくれるってさ。 今頃電話してるんじゃないか?」

「青春だな!」

「青春ですねっ!」

「青春なんですか?」

「あほあほ家族だな……」

 オッサンから始まり、早苗さん、渚と順番に話を振ってきた。

「んだと! じゃあてめえは青春じゃねえって言うのか!?」

「なんでだよ」

「てめえも家族の一員なら今の流れを壊さずにオチをつけやがれ!」

「つっこみだけで手一杯なんだよ!」

「けっ、オイ早苗、風呂はいるぞ風呂」

「はい、着替えを用意しておきますね秋生さん」

「渚、いつもみたいに一緒にはいるか」

「はいらないですっ! 小学四年生の時からお父さんとはいってないですっ!」

「てめえっ、小僧っ!」

「だからなんで俺にキレてるんだよっ!」

 

 

 …なんて言いながらも、俺がこの家族の一人と思われている事、それが嬉しかった……。

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