「ところでオッサン」
アホアホトライアングルから何とか抜け出して、オッサンに問いかける。
…関係ないが、傍から見れば俺も含めてアホアホスクエアになるのか…?
大丈夫だ。 俺はまだ、傍観者のままでいられている筈だ…。
「…来週の件、もう少し人を増やしても平気か?」
「ああ、多けりゃ多いほど楽しめるさ。 なんだ? いつもの奴らの他に誘うのか?」
「昼間に芳野さんと偶然会ってさ、しばらくあの家族とは遊んでないなって」
「そうですね、わたしも伊吹先生やふぅちゃんと遊びたいです」
「おっ、小僧からそんな言葉が出てくるとはな。 珍しくいい意見だ! よし! 電話かけてみな」
「朋也くん、どうぞ。 伊吹先生のおうちの番号です」
「サンキュ、渚」
「(もしもし、風子です)」
電話取ったら家の苗字から答えろよ。
「…あー、俺だ。 オレオレ」
「(? どなたでしょうか……っもしかしてヒトデさんですかっ!)」
ヒトデかよ。
「そうそう、俺ヒトデ。 実は事故っちゃってさ、大変なんだよ今」
「(大変ですっ! 風子どうしたらいいですかっ!)」
「そうだな…次の日曜日、渚と一緒に遊んでくれ」
「(意味わかりませんが風子、渚さん好きですので了解です。 なにがあっても時間を作りましょう)」
「約束な」
「(はい! 約束です!)」
「それと芳野さん…って公子さんもか。 あー、祐介さんに代ってくれるか?」
「(ユウスケさんですか? ……)」
………
「(ヒトデの名を騙るとは…何者だ? おかしな勧誘なら…)」
「こんばんは、岡崎っす」
「(なんだ岡崎か……。 風子はヒトデが電話をかけてきたって完全に信じてるぞ…)」
「まぁ夢を見せてやっておいて下さい。 ところで芳野さん、来週の日曜はお暇ですか?」
「(唐突だな…。 お前、来週も暇なのか?)」
「いえ、オッサンが遊びを企画したんですけど、よかったらみんなで参加してくれませんか?」
「(古河さんが…? ん…、そうだな…)」
「公子さんや風子も一緒に」
「(…わかった。 彼女達には俺から話しておく、参加させてもらおう)」
「ありがとうございます芳野さん」
「(いや、俺もしばらく家族サービスが出来ていなかったからな…。 丁度良い機会だ)」
「家族サービス…ですか…?」
芳野さんの家族サービス……
「ひゃっほーうっ! 芳野家、最高ーーっ!」
芳野さんがマイクを掴み、上半身裸で絶叫する。
「祐くん、頑張って!」
公子さんはキーボードを弾きながら嬉しそうに微笑む。
「ユウスケさん! 最高です! ヒトデ祭ですっ!」
その横でヒトデを観客席に投げている風子。
「「「よっしーの! よっしーの! よっしーの!!」」」
ステージに響く芳野さんの歌声、轟くMC、飛び交うヒトデ達!
会場が芳野家の想いで一体化する!
「怖ぇ~~~~~~~」
「(? 岡崎?)」
「あ、いえいえ、それじゃ詳しい事は後日連絡するんで」
「(ああ、頼む)」
「はい、それじゃあ」
「誘えたのか?」
「ああ、公子さんや風子も来てくれるみたいだ」
「なら小僧、風子が来るって事を棗に伝えてやれ」
「なんでだよ?」
オッサンの意図がわからない。
「風子と二木は仲良かったからな。 あっちの勧誘の力になるだろうが」
なるほどな。
「でも俺、あいつらの連絡先なんて知らないぞ?」
三人を見渡すが、
「「「……」」」
誰も知らないのかよ。
「お前、今日はどうやって連絡を取り合ったんだ?」
「小毬さんから家の電話に連絡が来ただけでしたので…」
「仕方ないな……」
俺は受話器を握る。
「朋也くん、どちらにかけるんですか?」
「……杏なら知ってんだろ」
「で? わかったのか連絡先は」
「杏が直接あいつに伝えてくれるってさ。 今頃電話してるんじゃないか?」
「青春だな!」
「青春ですねっ!」
「青春なんですか?」
「あほあほ家族だな……」
オッサンから始まり、早苗さん、渚と順番に話を振ってきた。
「んだと! じゃあてめえは青春じゃねえって言うのか!?」
「なんでだよ」
「てめえも家族の一員なら今の流れを壊さずにオチをつけやがれ!」
「つっこみだけで手一杯なんだよ!」
「けっ、オイ早苗、風呂はいるぞ風呂」
「はい、着替えを用意しておきますね秋生さん」
「渚、いつもみたいに一緒にはいるか」
「はいらないですっ! 小学四年生の時からお父さんとはいってないですっ!」
「てめえっ、小僧っ!」
「だからなんで俺にキレてるんだよっ!」
…なんて言いながらも、俺がこの家族の一人と思われている事、それが嬉しかった……。