「……恭介」

「ん? なんだ理樹?」

「この二人はこのままでいいの?」

「ああ、そのうち勝手に活動を再開するだろ」

 

 静かなのはかまわないけど、ホントにこのままでいいのかな……?

 僕は地面に伸びている幼馴染二人を見て思った。

 ……うん。別に大丈夫か。

CLANALI  第九話

 練習が終わった後、僕の部屋には男性陣が集まっていた。

 

「負けたぜ……自分自身によ……」

「ゴールしたら駄目だ……まだ、ゴールしたら……」

 

 未だにへたばったままの真人と謙吾が朦朧としながら何か呟いていた。

 二人はお互いに片膝を立てながら、背中合わせに座り込んでいる。

 流石に無理しすぎたみたいで、体力の回復が追いついていないみたいだった。

 

「なんだおまえら。その格好、無駄にカッコいいなっ!!」

 

 そんな二人を見ている恭介は、何故かとても嬉しそうだ。

  

「恭介、駄目だよ? またなにか考えついたって顔してる。二人とも疲れているんだからさ、無理させちゃ駄目だよ」

「何言ってんだ、そんなことはないさ。いいか、理樹? こいつらはただのお疲れヤングマンじゃない。不屈のお疲れヤングマンなんだ!」

 

 いやいやいや。

 何?その造語?

 

「その通りだ……」

 

 謙吾が恭介の言葉に反応して顔を上げる。

 

「俺は屈しない。例え五時間ぶっ通しでフルダッシュしたとしても。必死で考えた改心のギャグが理樹だけにしかウケなかったとしても……

 そこに恭介の編み出した、俺達の遊びがある限り……俺はっ! いや、俺達はっ! 遊び続けるんだぁーーーーーー!!」

「え? なんだ? 聞いてなかった」

 

 勢いよく立ち上がり、必死な宣言を行った謙吾。だけど恭介は僕の机を漁っていた。

 

「聞いてくれよ!? 構ってくれ!? 結構必死だったんだぞ? 今!」

「悪い悪い。ちょっと準備しててな。もう一回やってくれ。大丈夫! 今度は見逃さないさ!」

 

 リテイクを要求した! しかもすごい爽やかだ!!

 

「おっ? そうか。なら仕方ないな。今度は見逃すなよ?」

 

 謙吾も普通に受け入れた!

 

「よし、準備は出来たな。後は……」

 

 元気を取り戻した謙吾は、真人のやる気を引き出そうと声をかける。

 

「おい、いいかげん立ち上げれ真人。そんな格好ではリトルバスターズジャンパーが泣くぞ?」

 

 謙吾、残念だけど謙吾以外誰も着てないよ。

 続いて恭介が後を引き継いだ。

 

「知ってるか? 最近じゃ筋肉っていう字は、マサトって読み仮名をふるらしいぞ?」

 

 おしい。少しだけ動いた。

 

「いいよ二人とも。さすがに真人だって休憩が必要なんだよ」

 

 最後に僕。といっても無理強いは出来ないよね。

 

「真人の筋肉だって万能じゃないんだからさ。きっと動けないんだよ」

 

 庇う言葉を言ったつもりだったんだけど、真人は僕の言葉に反応して起き上がってきた!

 

「オイ、それはアレか? 真人の筋肉は万能じゃないんだ。せいぜい単純運動の繰り返しにしか使えないんだよ。

 僕達の激しい遊びには向いていないよね、まぁでもいくら真人だってそのくらい判ってるさ。それが気まずくて限界のフリをしてるんだよ。

 だから動けないのもしょうがないよねー、とでもいうのかぁー!? あぁー!?」

 

 久々の言いがかりだ! 僕達は無意識のうちに拍手を返してしまっていた。

  

「さすが理樹だな……理樹以上に真人を扱える男はいないな」

 

 狙ってないって。で、恭介はなんでそんなに満ち足りた顔をしてるのさ?

 

「真人もだ。これからは朝起きる度に、理樹のご機嫌を伺うんだぞ?」

「もちろんだ恭介。へっ……ありがとよ」

 

 お礼言うとこ? ここ?

 

「よし!それじゃぁ遊ぶか!」

 

 謙吾もほんと変わったなぁ。

 

「恭介、さっきから準備していたのっていったい何?」

「これさ!」

 

 恭介が取り出したのは、一抱えできる大きさの長方形をした箱だった。

 

「「人生ゲーム?」」

「ああ。これに特殊ルールを加えよう。ルーレットで『6』を出すたびに、女子への思いをぶちまけるんだ!」

「「「はぁ!?」」」

「人物指定などは強制しない。そして優勝者には、他の参加者に対する絶対命令権が贈呈される事とする!」

「「「……」」」

「どうだ? チャレンジするか?」

 

 にやり、と。

 僕達を見る恭介の目は、まさしく挑発的な瞳だった。

 対して、僕達の返事は……言うまでもないよ!

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