「渚、何か手伝うことはないか?」

「ありがとうございます、朋也くん。それではお皿を出していただけますか?」

 

 俺が自主的に家事の手伝いをする様になるなんてな。

 数ヶ月前じゃ、まったく考えられなかったと思う。

 そんな風に変われたのも、きっと……

 

 

「渚」

「はい?」

「……ありがとな」

CLANALI   第十話

「どうしたんですか朋也くん?」

「いや、何でも無い」

「朋也くんがお礼を言うときは、きっと理由があると思います。何でしょうか?」

 

 時々、やけに鋭くなるというかなんと言うか。

 

「気にするなって。ほら、料理盛り付けるんだろ?」

「わたしは気になります。お料理も大切ですけど、朋也くんの事はもっと大切な事です」

 

 ……まったく。

 そんな事言われたら、零れてしまうじゃないか。

 

「渚、俺はお前と出会えて良かったなって思ってる」

「? 朋也くん?」

 

 今……台所で料理をしている渚を見ていたら……

 

「どんな事だって適当にして、」

 

 何故だろう。、

 

「周りの事なんて、先の事なんて気にしない振りをして」

 

 不意に思えたんだ。

 

「今まで、ずっと一人で。でも……」

 

 何かが見えたような気がしたんだ。

 

「俺は、お前に出会えた」

 

 俺と、渚と。

 

「変われたんだ……」

 

 そして、もう一人。

 

「お前と、この家族を知って」

 

 誰だろう。

 

「こんな俺でも」

 

 わからない……けど。

 

「幸せってやつを」

 

 その光景は。

 

「見つけられそうなんだ」

 

 とても……

 

「とても……」

 

 

 

 

 

 大切な事を。

 

「大切な事を」

 

 

 

 

 

 

 

 

「朋也くん……」

 

 渚が俺に歩み寄る。

 二人の距離が、段々と、零に……。

 

 

 

「……早苗さん?」

「……はい?」

 

 渚の後ろに、凄い笑顔の早苗さんがいた。

 

「えと、いつから見てたんですか?」

「ラブラブですねっ!」

「小僧……」

 

 勿論。早苗さんが帰っているってことは、渚の父親であるこの人も帰ってきているってことで……

 

「め……」

「め?」

「めでてぇじゃ、ねぇかよ……」

 

 さて、どんな顔してこの人と飯を食べりゃいいんだ?

 

 

 

 

 

 

 

「ご馳走様でした」

「はい、お粗末さまでした」

 

 早苗さんと渚はいたっていつも通りだった。

 古河家の女性は、時々えらい強く見える。

  

「「ご、ごちそうさま……」」

 

 対照的に動揺ありありな俺とオッサン。声までハモってしまう。

 

「「……」」

 

 気まずい。

 

「ま、まぁ、アレだ。アレ。ヒ、ヒューッ。朋也くん、ヒューッ!!」

 

 落ち着け、オッサン。

 

「あ、あは、はは……は……」

 

 俺も落ち着け。

 

「秋生さん」

「さ、早苗?」

「やっぱり、幸せですねっ!」

「……あー。……ったく、仕方ねえな」

 

 オッサンは何かすっきりした顔になり、力強く頷いた。

 

「ったりめーだ! な、小僧!」 

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