「見事にやられてしまったな。 …またいつか、貴女とは別の何かで合間見えたい」 

「こちらこそいい勝負だった。 また会えるといいな」

 

 握手を交わしているのは謙吾と智代だ。

 それぞれ健闘を称えあい、またいつか、と約束を交わす。

   

「それでは失礼する」

「なんだ? お前達はもう帰ってしまうのか? よければ私達と一緒に古河さんのバーベキューに…」 

「誘ってくれるのはありがたいが、すまない。 こちらもこれから食事会が待っているんだ。

  お疲れ様ホットケーキパーティーがな」

「そうか、それはとても楽しそうだ。 では宮沢、またな」

「ああ!」

 

 そしてその場から振り返る謙吾だったが、

「って西園? なに写真を取っているんだ?」

「いえ…。 宮沢さんが女性の方と手を繋いでいる場面ですので。 ……是非笹瀬川さんにでも、と」

「待て待て待て待てぇぇぇぇーーー! 西園っ! わざとかっ! 狙ってるな!」

「み、宮沢……?」

 はっちゃけ謙吾に少しびっくりな智代であった。

CLANALI  第三十四話

「へへーん! どーよ? ことみさんの所有権が誰にあるか思い知ったかー!」

「仕方無い、ひとときだけ、彼女は君に貸し出そう。 すぐに返すんだぞ?」

 来ヶ谷は駄々っ子をあやすかのように言ってのける。

「元々あたしのだって! ことみさん! 言ってやって下さい!」

「???」

「この姐さん、ことみさんを貸してなんて言ってるんですよ!」

 ことみは少しばかり考えてから…

「ご返却、ありがとうございます」

 ぺこりとお辞儀。

「既に貸してたの!? 誰に? っていうかあたし返却待ち中だったのか?

  …流石ことみさんだ……。 このオチはことみさんにしか思いつかねーよ……」

 どっぷりはまっていく河南子。

「おねーさんとしては、ことみ君と河南子君のお持ち帰りセットがご所望なんだがな」

「…アンタもホンモンだね……」

 河南子は呆れているが、それでこそ来ヶ谷といったところだ。

 

 

 

 

 

「ほらよ、杏」

「? なによ陽平?」

「これ、欲しがってるんじゃないかと思ってさ」

「紙…?  っ!  ちょっとアンタッ!!」

 春原が広げた紙の内容を見て声を荒げる。

「なに? いらないの? いらないんなら破って捨てるけど?」

「いるとかいらないとかじゃなくてっ! …なんなのよ……」

 杏は突然の事態に気が動転している。

「杏ってさ、結構分かりやすいんだよね。 ま、前は全然気が付かないって奴もいたけどさ。

  きっとだけど、あいつも同じだよ。 …またおんなじ事繰り返す気?」

「……」

「どーでもいいけどね、僕は」

「……」

「……」

「…その、…うん、…ちょうだい、ソレ……」

「うん、ほら」

 杏がその紙を受け取る。

「…そんなに分かりやすいかな? あたしって」

「うーん、前の時はそうでもなかったと思うよ。 

  実際気付いてたのは委員長と僕ぐらいだったんじゃないのかな?」

「そっか…。 気付かれてたんだ……」

「後は自分でどうにかしなよ?」

「…うん。 ……陽平」

「あ?」

「…ありがと」

 

 

 春原はそのまま歩いていった。

 その場に立ち尽くしていた杏は、その紙を胸に抱きそっと呟く。

 

「恭介の、メアド…。 うん、前に進んでいかなきゃ…だよね……」

 

 

 歩いていく春原の顔を見る者が誰もいなかったのは、果たして幸か不幸か。 

 複雑な感情を押し込んだ、その表情を。

 

 

 

 

 

「またな、直枝」

「朋也さんもお疲れ様でした。 また遊びましょうね」

「暇だったらな」

 朋也の表向き面倒くさそうな返答にも慣れたのか、理樹は笑顔で握手を求めた。

 

「学校に帰ったらホットケーキ沢山作るんだよー」

「それは楽しそうですっ! …あ、あのっ今度……」

「うん! 今度一緒に作ろうね! ばいばい、渚ちゃん」

「ありがとうございます! またお会いしましょう、神北さんっ!」

「…ううん、 『こまり』。 ……ね?」

「っ! はいっ! ばいばいです、小毬さんっ!」

 

「筋肉を鍛えなおしてくるぜっ! じゃーな!」

「どうぞ、これはお土産です。 皆さんで召し上がってくださいっ」

「お? あんがとよ! んじゃ早速ひとつ…っ! …ぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

「わふーーーーっ! 井ノ原さん!? 井ノ原さんがでぃーぷぶるーなふぇいすに!」

「コンセプトは青春ですっ!」

「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!」

「今度はすぷりんぐっ!?」

 どんな顔色だそれ。

 

 

 

 

 

 リトルバスターズのメンバーがワゴンに乗り込む。

 

 そして最後に……

 

 

「古河さん」

「あー? 何だ、棗?」

「…今度は負けませんよ」

「へっ。 返り討ちにしてやんよ、小僧。 ……またな」

「…はいっ!」

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