「みんなっ! マウンドに集まって!! リトルバスターズ集合っ!!」
直枝がタイムを取り、マウンドに向かっていった。
どうやら調子を崩したピッチャーのフォローでもするようだった。
「朋也くん」
「ん? なんだ渚?」
「お父さんがなにか言っています」
三塁にいるオッサンがベンチに向かってなにか叫んでる。
「おーい! 俺達も集合だ!!」
「よく集まった、我らが古河ベイカーズよ!」
何事だ? これは?
「ちょっとおじさん? なんであたし達も集まってんのよ?」
杏がもっともな疑問を口に出す。
「あいつらがせっかくタイムを取ってるんだ。 俺達だって士気を高めるいいタイミングじゃねえか」
タイミングって言われてもな……。
「きっとあちらさんはこのタイムで一皮剥けてくるぜ? こっちだって負けていられねえぞ?」
「…って感じだ! わかったかお前ら!」
オッサンは激励だか脅しだかネタなんだかよくわからない訓辞を行って俺達に返事を聞く。
「いや、まったくわからん。 杏、理解できたか? 今の話」
「あたしだって意味わかんないわよ。 椋は?」
「えと…ごめんなさい」
「かーーーーーっ! これだから最近の若いモンはっ! 早苗! こいつらに言ってやれ!」
若いモンって。
「はい。 みなさん、秋生さんが言いたかった事というのは
『この試合が終わったらみんなでバーベキューだー』 って事ですっ!」
一言もバーベキューなんて単語は出ていなかったと思うんですが。
「そー言う事だ。 だからしゃかりきに頑張りやがれよ、ガキンチョ共」
「初めからそう言えばいいのに。 歳? おじさん?」
河南子がオッサンにつっこむ。
「あんな説明で理解できる人間がいるかっての。 ねえ? ことみさん」
「私、理解できたの。 河南子ちゃん、私は人間じゃない?」
まじかよ。
「相変わらず凄いなことみは。 さすが天才少女」
「朋也くん……、ありがとうございます」
ちょっと照れてる。
「ことみさんってば、コイツの前だとほんと感情豊かになるよねー。
やっぱりことみさんってばコイツがお気に入り?」
河南子がからかうように訊ねるが、
「???」
「いや、だからそこで 『はてなみっつ』 は攻略キャラとして駄目だろ」
「「「攻略キャラ!?」」」
「あ」
しまった。 なんかしまった。
「朋也? あんた渚がいるのに他の娘を攻略するって言うの?」
「杏、目が怖いから」
「朋也くん……」
「いや。 渚、だからだな……」
「ふーん、岡崎って」
「お前はしゃべるな春原」
「てめえ、小僧…!」
「だーかーらっ! 人の揚げ足をだな!」
誰も俺の話を聞いちゃいない。
「少しは人の話を聞けよお前ら!」
「はっきりしなさいよっ!」
「岡崎くん……」
「岡崎……」
「にぃちゃん…」
「小僧っ!!」
「だから! 俺が一番好きなのは、渚だーーーーーーーーっ!」
「「「「……」」」」
待て。 俺は今、何を叫んだ?
沈黙が痛い。
というか誰か助けてくれ……。
見事に静まり返ったグラウンド。
そんな中、
「一番ってことはよう? 二番も三番もいるのか? あいつ?」
なんて声が風に乗って届いてきた。
ってちょっと待て。 それじゃあまるで俺が…
「朋也くん」
渚がうるうるした目で問いかけてくる。
「二番さんはどなたなんですか……?」
「ばっ馬鹿! 別にそんなやつは!」
「ことみさんでしょ?」
「うるさい河南子! 混ぜっ返さんでくれ!」
「どきどきするの……」
ことみ? 今その表情するのは反則だぞ?
「お姉ちゃんかな?」
「ちょっ、椋! なんでよっ!?」
「あ、もう別に嬉しくないよね…お姉ちゃんは今、」
「わーーー!わーーー!わーーーーっっ!」
「なんだよ杏? 突然叫んでさ」
「アンタはしゃべるな陽平」
「ホントあんたら二人そろってひどいですねっ!?」
「岡崎……」
「あ、ああ。 智代は落ち着いているな?」
「…三番は誰だ? その…わ、わた」
全然落ち着いてねぇ!!
「小僧ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「秋生さんっ! バットはさすがに…! 大丈夫ですよ、ね? 岡崎さん?」
「早苗さん、助かります…」
「岡崎さんはっ、渚も、わたしも、幸せにしてくれるんですよねっ?」
「小僧ーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
「オッサン! 違うからっ!」
「違うんですかっ!?」
「早苗さんもっ! あの時言ったのは、オッサンも含めたあんたら家族って意味で!」
「なぁにーーーっ! 俺様もなのかぁーーーーーっ!?」
ああもう、なにがなんやら……。