ブンッ! 「ストラーイクッ」 

 

「やっぱりこうでなきゃ、あいつらしくないよな」 

 

  ブンッ! 「ストラーイクッ」

 

「おーおーおー、ホームランでも狙ってんじゃん? アレ?」

 

  ブンッ! 「ストラーイクッ! バッターアウトー!」

 

「なんでか知らないけど、安心するわね」

CLANALI  第二十話

「「「春原、ナイス三振」」」

「アンタら少しは人のこと応援しようって気は無いんっすかっ!?」

 

 朋也、河南子、杏が三振して帰ってきたトップバッターに、なぜか安堵の表情を見せる。

 三振をしたその本人はまるで納得していないのだが。

 

「そうは言っても活躍しすぎる春原は春原っぽくないしな…。

  もしかしてさっきは春原の中に芽衣ちゃんが入っていたのか!?」

「どんな人間ですか!? 僕らっ!?」

「ああ、悪い。 さすがに酷いか」

「ったく、分かればいいんだよ。 まったく岡崎は…」

「芽衣ちゃんに失礼な事を言っちまった」

「僕にでしょっ!?」

 

 

 

 

「うしっ、あたしの番だ。」

 さっさと打席に入る二番打者は河南子。

 コンパクトでありつつ鋭いスイングをしながら鈴に目を向ける。

 

 ヒュッ!

「ボール!」

 

 ヒュッ!

「ボール!」

 

 ヒュン!

「ストライク!」

「えーーー、今のボールっしょ? 審判、目ついてる?」

「ついてるよ! 今のはストライクです。 ほら次来るよ、河南子」

 しかし不満げな河南子。

「とりあえず鷹文の声ってのが駄目」

「無茶言うなよっ!」

「じゃあ審判コールの後に 『君には難しすぎるかな?』 ってつけるんなら我慢する」

「「なんで!?」」

 キャッチャーの理樹と鷹文が同時につっこむ。

 

 

 

「理樹と鷹文って奴…、やけに息が合ってないか?」

 ファーストの謙吾が近くにいる真人にふる。

「悔しくなんか無いですーー!! 別にいーもんねーー!!」

「なんで切れてんだお前……」

 

 

 

「仕方ないなー」

「えっ!? いいの!?」

「河南子は言い出したら止まらないからね。 ごめんね直枝さん、うるさくして」

「え、ううん。 鷹文君がいいならかまわないけど……」

 

「投げていいのかーーー?」

 鈴がマウンドから叫ぶ。

「いいよ鈴! さっきの調子でいこう!」

 理樹は改めてミットを構える。

 

 

 

 ヒュッ!

「ボール! 君には難しすぎるかな?」

 

 ヒュンッ! キンッ!

「ファール! 君には難しすぎるかな?」

 

 ヒュッ! ブンッ!!

「ストライク! バッターアウトッ!! 君には難しすぎるかな?」

「てめえ鷹文! 喧嘩売ってんのかぁーーーーーっ!!」

「河南子が言えって言ったんでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、喧嘩はよくないぞ二人とも。 仲良くしないと駄目だ」

「あ、次ってねぇちゃん?」

「ああ、よろしく頼む」

 智代は二、三度素振りをしてから構えを取った。

「ん? なんだ? すごく早いぞあいつのバット」

 鈴が驚く。

「むーーー。」

 若干緊張してしまったようだが、

「大丈夫だよ鈴っ! 僕を信じてっ!」

「…わかった」

 理樹の一声で鈴の呼吸が元に戻った。

 

 

 キンッ!

 

 智代の打球は大きく伸びて、外野にいるクドの頭を越える!

 

「「クドっ!?」」

 

「わふーーーーーーーーーーーーっ!」

 ずしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!

 

「能美っ!?」

「クーちゃん!? 大丈夫!?」

 後ろ向きに走ったクドは、勢いをつけすぎてボールの落下地点付近で盛大に転んだ。

 

 ……やがてゆっくりと顔をチームメイトに向けて、

「転んでしまいました…、でもっ取れましたっ!!」

「「「おおーーー」」」

 両チームからクドのがんばりを称える声が上がる。

 そのグローブの中には、しっかりと白球が納まっていた……。

 

 

 

 

 

 

「すごいすごーい! みんなすごいよーー。 無失点なんてすごいよー」

 小毬はさっきのクドの活躍で、すっかり舞い上がっている。

「これは私達も頑張らねば、だネ! 小毬ちゃん?」

「がんばるよー!」

 次の回からは、謙吾・葉留佳・クド・小毬の打席順だ。

 謙吾の後は下位打線なトリオだが、この三人に限っては余計な気負いも無く、

 純粋に気持ちが入っている。

 

 

「よし…、ここで一つお前達に策を授ける。 お前達にしか出来ない特別な任務だ」

 恭介が四人を近くに集め、なんとも怪しい内緒話を始めた。

ページのトップへ戻る