カキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッッ!!!
「え?」
「マジかよっ!!」
春原は何が起こったか理解できず、秋生は声を荒げる。
そう、初っ端第一球目。
見事なまでに、ボールは青空の彼方へ消えていった……。
「ふっ、先頭打者の面目躍如、と言ったところだな」
来ヶ谷が事も無げにつぶやくと、リトルバスターズベンチから大喝采が響き渡る。
正に目が覚めるような一発だ。
「やるねぇ姉さん。 アンタの気概、恐れ入ったぜ」
ベースを回って戻ってきた来ヶ谷に、秋生が声をかける。
「そちらも早く本腰を入れたほうが良いのではないか? 見たまえ、ピッチャーはあの調子だ」
春原はチームメイトからの叱責を対処するのにいっぱいいっぱいになっていた。
「ま、そいつはこれからのお楽しみってモンだ。 オラ、次いくぞ次っ!
ピッチャー! てめえはとにかく俺の指示通りに投げろ! いいな!?」
「あ、ああ。 それはいいけどさ…。 何? 今の?」
「うだうだ気にすんなっ! ○○タマついてんだろっ!? それともいらねえってのか! ああ?」
「はいーっ! ありますーっ! いります次イキマスッ!!」
「古河さん、続けて出塁、行かせてもらいますよ?」
「お? 棗、お前が二番打者なのか? お前なら四番で決まりだろ?」
「うちには良い四番がいるんですよ。
それに俺は、あいつらにチャンスを繋げるっていうこの打順が好きでしてね」
「ふん、いい目しやがって。 だがな、俺様はキャッチャーだってスゲエぜ?」
「…はい、それでは勝負させていただきます」
語り合う二人。 完全に二人の世界だ。
「年上による攻め…、敬語な恭介さん受け…。 アリです……」
「西園さん…? 何言ってるの……?」
「ストライクツー!」
鷹文の判定が響く。
「くっそ、今度は狙ってきたのか…! なら次は…」
恭介の追い詰められた声というのも珍しい。
春原は、秋生の指示に対して的確に投げていた。
スポーツ推薦は伊達じゃない!
「ボールスリー!」
「古河のおじさんっ! どこに投げても打たれそうな気がするっす!」
「アホッ! 根性入れろっ!」
スポーツ推薦は…伊達じゃない……?
「もらった!」
カキンッ!!
鋭いライナーが二三塁間に!
バスッ!
「何!?」
見事なまでに、その痛烈な当たりをグローブに収めたのは、
「我ながら自分の才能に脅威を感じるわね……」
「杏!」
「どーよ恭介! あんたのボールはぜーんぶあたしが取ってやるからねっ!」
「すごいなオイ。 あれを良く取る…」
「どんどん打ってきなさいっ!」
そんな二人のやり取りに朋也がつぶやく。
「そんなに嬉しいのか…。 棗が打ったボールを自分で取るのが……」
だんだん周りの目が生暖かくなってきているような……
「すまん真人」
「なーに、任せておきな! っしゃーーあ! かかってきなっ!!」
真人絶好調。
「ストライクッ! バッターアウトッ!!」
「うがあああああぁぁーーーーーーーーーーーーっ!! なんじゃそりゃーーーーーーーー!」
完全に秋生の掌の上で遊ばれていた。
正に絶好調。
「理樹、俺は…。 俺は……っ!」
「うん、真人。 敬遠球にバット振らないでね。 それじゃ、行ってくるよ」
理樹がバッターボックスに入る。
「お願いします」
「なるほどな…。 お前が四番か……」
「なんですか?」
「…気にすんな」
秋生は何かを言いかけたが、言葉を飲み込み黙ってミットを構えた。
「バッターアウトッ! チェンジッ!」
「わふ…。 井ノ原さんに続いてリキまで…。 そんなにあの人はうまいんですか?」
三番真人、四番リキがそろって凡打。
まさかの展開の中、クドは恭介に訊ねる。
「あれは完全にキャッチャーによる配球指示の結果だな。
もちろんピッチャーのコントロールも必要だが…。 どうにかしないとな…」
「どうするんですか?」
「それはこの回の守備が終わったら話すさ。 今はこのリードを守る事に集中だぞ、能美?」
「いえっさーっ!」
両チーム共に、序盤から色々と予想外な展開となっていた。