「試合をしようぜ!! 相手チーム名は……リトルバスターズだ!!」
オッサンがなんか言っている。
「おいおい、もっと盛り上がれよ? なんだぁ? そのしけた面はぁ? それでも大宇宙銀河かぁ?」
「顔は生まれつきだ、悪かったな。後、何度も言うが俺は岡崎朋也だオッサン」
「んなこたぁどーでもいいんだよ。で、やんのか? ん?」
「お父さん、朋也くんと公園で野球してくるんですか?」
「あらあら秋生さん、とてもいいですねっ。コズミックさんも頑張って下さいねっ!」
「お母さん、朋也くんです。とても素敵なお名前なんですから、変えては駄目ですっ!」
「だーかーらどーなんだよ! 小僧! やんのか? やんねーのか?」
渚の台詞でオッサンはご機嫌ナナメにシフトした。
「やらない。見てのとおりアンタの代わりに店番やってんだ。一人で行って来い」
俺の返事にオッサンはやけに顔を近づけて、俺達の勘違いを訂正してきた。
「だーれが今っつたんだよ? 明日だ明日。草野球だっつの」
「明日? 明日は、あー渚?」
「えっと、わ、わたしなら大丈夫です。はい」
明日はせっかくの日曜日だ。俺は渚とデートでもしないかとさっき話してたんだが……
「なんだなんだぁ? 二人で目配せなんかしやがって。アイコンタクトってやつかぁ? 通じ合ってるぜ! とでもいうのかぁ?」
「とても仲良しですねっ!」
「ふんっ! まっだまだだな。渚とは俺様が一番通じ合ってんだよ小僧。わかったらパンダのように死ぬ気で働け。
その間、俺はずっっと渚とみつめあっててやるぜ!」
「ずっとみつめあったりなんかしませんっ! それにわたしは朋也くんの方がいいですっ!」
渚、おまえ実の親の前でなんてゆー恥ずかしいことを。
「なんだとぉーぅ! この小僧の方が俺様よりいいっていうのかぁ!」
「ラブラブですねっ!」
「ジェーーラシーーーーッッ!! 俺は愛されていないってゆーのかぁー!」
「わたしは、秋生さんが大好きですよ」
「早苗、俺もだ」
「はい!」
「……おめーら邪魔だ。どっか行け」
人に店番頼んでおいてこのオッサンは。
「そーかい。んじゃそーいうことで」
俺が身につけていたエプロンに手をかけると、
「待て待て、明日のことだ。やれ。相手にはもうやるって言っちまったんだ」
「またアンタは。店はどうすんだ?」
「もちろん臨時休業だ。早苗、渚、お前らも来い。早苗は応援、渚は参加だ」
「はいっ。お弁当を用意しますねっ」
「わかりました。……朋也くん、明日は一緒に野球をしませんか?」
「ああ、わかったよ。オッサン、俺も参加だ」
「いよっし! 残りのメンバーにも声かけておけよ」
「ああ……ってちょっと待てオッサン! まだ集めてねーのかよ?」
「もちろんだ」
「誰も?」
「お前らには話した」
「まだまだ足りねーよ!」
「なんとかしろ。小僧、お前の知り合いで集めな。相手も学生だからな」
「まったく。おい渚、出かけるぞ。人集めだ」
「以前、一緒に野球をしたみなさんですか?」
「そうだ、あいつらならなんとかなんだろ」
「はいっ! お出かけです。えへへっ」
「店のことはまかせな。行ってかましてこい! コスモ!!」
また名前変わってるよ。
「秋生さん」
「んー、なんだ早苗」
「渚、楽しそうでしたね」
「ああ」
「渚が楽しそうにしていると、とても嬉しいです」
「ああ、俺もだ」
「秋生さんと渚と、後、岡崎さんも。これからも楽しく暮らしていきましょうねっ!」
「ああ、ってオイオイ小僧もか?」
「はいっ!」
「……ちっ、しゃーねーか。あいつは渚のお気に入りだからな」
「これからも家族として、みんな一緒に」
「ああ、家族で力を合わせて……ってそれは待て! 待て待て待て! 早い! 早いぞ早苗! まだ学生だぞ! 渚はやらんぞ!?」
「でも、私は渚ぐらいの年の時、もう秋生さんとのことを考えていましたよ?」
「ぐあぁぁぁー! 渚ぁーー! 俺はぁーー! 俺はぁぁーーーーーーぁ!!」
「はいはい、そろそろエプロンつけてくださいね? 秋生さん?」
俺と渚はまず学生寮に向かって歩いていた。
確実に暇しているやつがそこに生息しているからだ。
「お電話せずに、突然お邪魔しても迷惑ではないでしょうか?」
「気にすんな。あいつなら寝てるか、アホな音楽聴いているか、ラグビー部ともつれ合っているかだ」
「ラグビー部の方たちと仲良しなんですか?」
「ああ、あいつは○モだからな」
「ええっ!? そうなんですか!? ってもう騙されませんっ! 前にひどい目にあいました」
「あー、そんなこともあったな」
「朋也くん、いじわるです」
仕方ないだろう。渚を弄る事は、もはや俺のライフワークでもあるのだから。
そんなことを話しつつも、だいぶ目的地に近づいてきた。
そんな時、
「岡崎じゃないか」
背後から声をかけられた。