「真人っ!! そっちに行ったぞ!!」

「きーんーにーくーーーダーーーイブッ!!!!」

CLANALI  第三話

「ナイスキャッチだヨ! 真人くん!」

「まーな」

「わふー、さすがのきんにくさんですー」

「まぁーな」

「はっはっはっ、まったく筋肉しか取り柄が無いこともおねーさんどうかと思うぞ?」

「まかせとけ」

「こいつ馬鹿だっ!」

 

 

 僕たちは朝食を食べた後、早速グラウンドに集まって練習を開始した。

 リトルバスターズのみんなはしばらく練習らしい練習もしていなかったのに、とてもいい動きをしている。

 特に僕と鈴だ。

 僕は正直今までそんなに運動が得意な方じゃなかったんだけど、この野球に関してだけは違う。

 真人ほどではないけれどバットを振りぬく力もついているし、恭介と本気のキャッチボールをすることだ出来る。

 そして鈴は……とても真っ直ぐな球を投げる事が出来る。

 それどころかここぞというときにはニャーブ……カーブといった変化球すら操りだすほどだ。

 でも、僕たちは誰もソレがおかしいなんて口にしない。

 だって、ずっと、ずっと頑張ってきたんだから。

 あの日々の中。

 ずっと。

 

「ぐはぁっ!」

「そこにいるお前が悪い、謙吾。気を利かせろ」

「なんで打順待ちの俺の背中に向かって130㎞オーバーの直球が来るんだ!?」

「お前があたりに来たとしか思えんな。……うん、思えんな」

 

 ……頑張ったよ? うん。

 

「ああぁー!! 俺のリトルバスターズジャンパーに汚れがぁーー!」

「うるさいっ! 練習再開じゃーーー!!」

 

 

 

 

「西園さん、葉留佳さん、休憩中?」

 

 三塁ベース脇にある木の下で、二人がひとつのノートを読んでいた。

 

「おおーう、我らがキャプテン、理樹くんじゃナイデスカ?」

 

 なんで疑問文?

 

「ふたりでみおちんのうれしハズカシ乙女ノートを観賞しているのでありますヨ」

「お、乙女ノート?」

「違います」

 

 相変わらず無駄の無いクールなつっこみだよ西園さん。

 

「わたしは試合に参加はできませんから、違った形で直枝さん達の力になれればと思いまして」

 

 そう言って西園さんは僕にもそのノートの中を見せてくれた。

 

「これって……野球の試合内容のまとめ?」

「はい。先ほど恭介さんからお預かりしましたので、内容を確認していたところです」

「しかもこのチームって」

「はい。明日わたし達が対戦することになる、古河ベイカーズの試合内容です」

 

 結構細かいところまで記入されているそのノート、これがあれば事前準備はばっちりだけど。

 

「こんなの恭介はどうやって手に入れたんだろう?」

「わたしもお聞きしたのですが、恭介さんは『それは禁則事項さ』としか答えていただけませんでした」

 

 また新しい漫画かなにかにはまっているんだろうか?

 

「うん、じゃあ西園さんにはそのノートの分析をお願いするね」

「まかされました」

「まかされヨー」

 

 明らかに適材適所ではない人物も一緒になって答えてきた。

 

「葉留佳さんは練習再開」

「えーっ。私、日陰、好き。今はだけどネー」

「来ヶ谷さんとクド、それに葉留佳さんの捕球能力はリトルバスターズにとって大切な要素だからね。もう少し僕と一緒に頑張ってくれないかな?」

「……そっか。 私、理樹くんに期待されてるんだぁ…… うん! お日様の下で青春の匂いを撒き散らしてくるよ!」

 

 そう言って葉留佳さんはとても嬉しそうに駆け出していった。

 

「じゃあ西園さん、僕も練習に戻るから」

「はい、お気をつけて」

 

 僕も葉留佳さんを追って走り出そうとしたとき、

 

「相変わらず自然体で女性に優しいですね。天然ですか?」

 

 ポツリとあまり聞こえたくないような言葉が耳に届いた気がした。

 よし、振り返るのは無しだ。うん。

 

 

 

「よーし! いったん休憩だ!」

 

 恭介の掛け声でパラパラとみんなが集まってくる。

 

「うーん、なんかまだ本調子じゃないな。謙吾! グラウンドを大回りでダッシュしねえか?」

「かまわんが、それは勝負か?」

「ほぅ? この無敵筋肉に勝てるとでも?」

「ふっ、みなまで言わすな」

「上等だ」

「ならば」

「位置について」

「覚悟を決めて」

「筋肉と語り合って」

「剣のように」

「よーい」

「とっとと行けっ! 暑苦しいんじゃーっ!!」

「ぶはぁっ!」

「はっはっはー真人よー! 先に行くぞー!」

「おいこら! 汚ねえぞ! くそっ! 待ちやがれー!」

 

 鈴以外はまったく気にせず思い思いに休憩していた。

 いつものことだけど。

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