「よーしガキ共ー集まれー!」

 掛け声が響き、わらわらとホームベース周辺に全員が寄ってきた。

「今日はみんな暇している中、よく集まってくれた。

  今日の内容についての説明をしてやっから、耳の穴かっぽじってよーく聞きやがれ!」

 全員の顔が引き締まる。

「今日の 『早苗パン早食い大会』 だが、」

「「「違う!!」」」

 一部の人間から神速のつっこみが入ったが、リトルバスターズの面々は「?」状態だ。

CLANALI  第十七話

「えー、残念な事に 『早苗パン早食い大会』 は無期限延期となりました……。

  そーだよ。 野球だよ、野球! んだよお前ら」

 数人から発せられた殺意に屈して、なぜか逆ギレ。

「こういう時にしっかり営業活動をしておかないと、後で残り物を配り歩く事になるんだよ!

  少しはうちの経営状況を改善してやろうとか思わねえのか? ああん?」

「よそでやれ、オッサン」

「お父さん、恥ずかしいです。 野球の説明の続きをしてください」

 朋也と渚の説得?にしぶしぶ了承して話を続ける。

「わーったよ、ったく。

  あー、今日の試合は五回まで。 理由は俺が決めたからだ。

  その他のルールに面白おかしい事は無い、いたって普通の草野球だよ。

  で、審判は主審のみ。 オイ、こっち来い」

 鷹文が一歩踏み出す。

「坂上 鷹文です。 今日の審判をさせていただきます。

  何人かの方にはお話しましたが、僕は 『古河ベイカーズ』 の選手である坂上 智代の弟です。

  ですがもちろん、公平なジャッジを行うよう心がけます」

「趣味は幼女愛好です」

「よろしくお願いします、ってそんな事お願いしないよっ!?」

 河南子が口を挟み自己紹介をまぜっかえすが、鷹文も慣れたものでボケを一刀両断。

「すげぇな…。 あの若さで理樹っぽいノリつっこみだ」

「ああ、要注意人物だな…」

「審判を注意人物にしてどうすんの……」

 真人と謙吾はわりと本気のようだが。

 

 理樹の力が抜けたつっこみを拾う者は、誰もいなかった……。

 

 

 

 

「先攻は 『リトルバスターズ!』 になります。 両軍、礼」

「「「「お願いしますっ!!」」」」

 

 両チームが散開しベンチやポジションに散っていく。

 そんな中、

「恭介!」

 杏が強い口調で恭介を呼び止める。

「杏じゃないか、どうした?」

「どうした、じゃない! いい!? アンタは必ずぶっ倒してあげるんだから、覚悟しなさい!」

「おいおい、突然どうした? まぁ挑戦なら受けて立つが」

「この男は…っ!! なんであたしがこんなに気が立ってるのかわからないって言うの!?」

「? よかったら話してくれないか? 杏」

 無自覚にも親身になって心配する恭介。

「だから! さっき…、その…あんたが……」

 恭介が近づいてくるほどに歯切れが悪くなっていく。

「杏?」

 恭介が目の前に来た瞬間、瞬く間に顔が上気していって…。

「っの馬鹿っっっ!!!」

「うおっ!?」

 テンションメーター振り切れ寸前。

「あー、もう! あたしにだってわかんないわよっ!!」

 逃げるように恭介から離れていく。

「えーと…、え?」

 そして意外にも、というかやっぱり、というか…この男は全然理解していなかった。

 

 

 

 ずんかずんか歩いていく杏を見ながら彼女の妹は、

「お姉ちゃんって、面食い…? それともさっき言われた一言が……」

 そうなのか……?

 

 

 対して、ベンチからその光景を見ていた西園は、

「これがツンデレ……」

 …なんか楽しそうだ。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「なんだと……!?」」

 リトルバスターズのベンチがざわめく。

「古河さんじゃない……?」

 恭介にとっても予想外な配置のようだ。

「あれれー。 みおちゃん、向こうのピッチャーさんって渚ちゃんのお父さんだよねー?」

「はい、そのはずです」

 小毬の問いに西園が答える。

「意外でした…。 あの方のデータはお預かりしたノートに記されていません。

  もちろん、通常のデータは記載されているのですが…。 

  おそらく、今まで一度もマウンドに上がったことが無い方なのかもしれません」

「ほう、それは面白い。 こういうイベントは、おねーさん大好きだぞ」

「でもさー唯ねえ、相手チームの人達もびっくりしてるみたいデスヨ?」

 

 

 

 

 

 自信たっぷりにマウンドに立っているのは、

 

 

 

 

 

 金髪ヘタレ、春原陽平。

 

 なぜか古河ベイカーズの面々もびっくりしています。

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