「ってことはあれか? 直枝が『リトルバスターズ』のリーダーって事でいいのか?」

「うん。一番初めに結成したのは恭介なんだけど、今は僕がやらせてもらってるんだよ。まだまだ僕なんかじゃ頼りないかもしれないけどね」

 

 朋也が理樹に尋ねていると、

 

「そんなことないよー! 理樹くんは立派なキャプテンさんで、リーダーさんなんだよ!」

「わふー! そのとおりですー!」

 

 小毬とクドが理樹に向かって後ろから飛び付いてきた。

CLANALI  第十六話

「そうか。よく判った。……邪魔しないうちに俺は行くから頑張れよ?」

「ちょっと!? 色々誤解したまま颯爽と去らないでよ朋也さん! 小毬さんもクドも! 誤解されちゃってるよ!? ねぇ!?」

「誤解?」

「……わふ」

 

 理樹の必死な呼びかけにも、ほんわか担当とわんこ少女はよく理解していない。

 

「……直枝。俺は一つだけしか言えん。予想外だがまぁそっち方面に頑張ってくれ」

「何に!? 何を!? って、そもそも僕だって予想外だよ!?」

「最高潮時の春原並の速さだな……。 まさに予想外だ」

 

 理樹のつっこみの速さに少しだけ驚きつつ、朋也はおかしなところで理樹に感心していた。

 

 

 

 

「……それでね、理樹くんは、ときどき謙虚さんになっちゃうの。だからこうやって応援するんだよー」

「ぼでーらんげーじなんですー!」

「直枝は困ってたから応援になってない。それとボディな、ボ、デ、ィ」

 

 なんだかんだ言っても、朋也だってつっこみ性能は高い。 

 出会い頭の問答が功を奏したのか、小毬やクドという初対面な女性陣とも会話をしている朋也だった。

 

「わーん、駄目出しされたよー」

「ぼ、で、ぃ……ぼ、でえ……」

「おしい。さぁもう一度。ボ、デ、ィ! はい!」

「ぼ、で、い。……ぼ、でい。ぼでぃ! ぼでぃー! わふっ! ぼでぃー!! いえてますっ! いえてますよ私っ!! やりましたーっ!」

「すごい、すごいよクーちゃん! 岡崎くん教えるの上手だよー」

「いや、ぜんぜん嬉しくないが」

「わふーっ! あげておとされましたっ!?」

 

 これはこれで馴染むのが早過ぎでもある。

 

「朋也くん、わたしもお二人にご挨拶させてください」

 

 頃合いを見た渚が、そんな集団に近寄ってくる。

 

「こんにちは、古河渚です。よろしくお願いします」

 

 渚の挨拶はとても丁寧な口調だ。相手が年下であろうとも、根本的な口調は変わらないようであった。

 

「うん、神北小毬です。よろしくね、渚ちゃん」

「能美クドリャフカと申しますっ。こんにちはです」

「渚さんのお父さんは、さっきのおじさん、古河さんなんだって」

 

 理樹の補足に、小毬とクドは満面の笑顔で驚きを表した。

 

「そーなんだー。とっても面白いお父さんだよねー」

「はいっ! やんちゃさんでしたっ!」

 

 その台詞を聞いた渚は、顔を少しだけ赤らめて。でも、やっぱり満面な笑顔で言葉を返した。

 

 

 

 

 

「失礼、貴女が坂上さんか?」

 

 多少緊張した表情で智代に声をかけたのは謙吾だ。

 

「そうだが、お前は?」

「申し遅れた。自分は宮沢謙吾。以前貴方の話を聞き、是非とも話をしてみたくてな。無礼を許してほしい」

「それは構わないが……。なんだ? 話したい事とは?」

「特になにか、という訳でもないのだが。自分も多少は武道を嗜む者。より高みを目指す指針となるべき人物はいたほうがいい。貴方は武だけではなく文も、更には仁、心に関しても尊敬される人物と聞いた。しかし、誠に修行不足で恥ずかしいが、話に聞くだけではどうも人物像が固まらなくてな」

「それほど興味を引くに値する人間かは分からないが、そう言ってくれるのは嬉しい。……まだ女の子らしさが足りていないのは残念だがな」

「女の子? なんだ?」

「いや、なんでもない。うん、お前は礼儀もしっかりしている。少しお互いの事を話してみるのも面白そうだ。改めて私は坂上智代だ。よろしく」

  

 二人は妙に意気投合するが、やがてどちらともなくため息をついて前方に目を向けた。

 

「「あいつは、どうにかならんのか……」」

 

 視線の先には元気の塊が二つ。馬鹿と馬鹿がそこにはいた。

 

「筋肉ーーーいえーーいいっ!!」

「やめてーーーーーーーー!! もう、筋肉は嫌ーーーーーーーーーっ!!」

 

 真人が春原に筋肉固めをかけている。

 

「おいおい。『僕だって筋肉にはちょっと自信があるんだよね』って言ってきたのはお前だろ? 筋肉仲間として遠慮はいらねぇって!」

「そんな仲間はいやだーーーーーーーーーっ!!」

 

 なんとか筋肉固めから逃げ出そうともがく春原。

 砂塵がもくもくと、二人の周囲から立ち上っていた。

 

「周りに迷惑かけるなーーーっ!」

「んごっ!!」

 

 結局、駆け寄ってきた鈴のハイキックがその騒動を終わらせた。

 

「まったく! あほかおまえはっ!」

「あ、ありがとう君。助かったよ、ホント」

 

 地面にへたり込んだまま春原が鈴に答える。

 

「気にするな。こいつが馬鹿なだけだ」

「へぇー、君かっこいいねっ! 名前なんていうの? 僕、春原」

「……鈴。真人、謝れ。弱い者いじめは、めっだ!」

「は、はは……。僕、弱い者なんだ……?」

 

 初対面の女の子からその様に思われて、春原の中からナンパをする意気込みがしおしおと消えていく。

 

「ま、確かに筋肉はまだまだ足りてねえがな!」

「アンタ復活早いっすねぇっ!!」

  

 

 

 

「平和ですね……」

「はいっ! そうですねっ!」

 

 そんなグラウンドを見ながら、西園と早苗はまったりお茶会をして過ごしていた……。

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