「オッサン。これから試合だってのに大変なことになってないか?」

 

 必死になって早苗さんを捕まえたせいか、オッサンの額には滝の様に流れる汗が……。

 

「へっ、誰に向かって言ってんだ。こんなのブレヰクファースト前過ぎだぜ」

「そっか。良かったな」

「良くねえよ! 突っ込めよ! 労われよ!」

 

 まぁ、十分元気みたいでなによりだ。

CLANALI   第十四話

「よう、岡崎」

 

 グラウンドに着くや、春原が声をかけてきた。

 

「藤林姉妹も一緒か。岡崎、今日の面子を教えてくれよ」

「試合に参加するはメンバーか? 俺に渚、オッサンに杏と藤林、ことみ、智代と河南子。早苗さんが応援で、最後にもう一人、鷹文だな」

「カナコ? タカフミ? 誰だよそれ」

「何? 朋也の知り合い? それとも渚?」

 

 春原と杏が説明を求めてきた。

 

「いんや、鷹文は智代の弟だ。で、河南子はその連れ」

「はい。私も朋也くんも、お二人とは昨日知り合いになったばかりです」

 

 俺と渚の説明に春原は目を細めた。

 

「ふーん。そいつら戦力になんの? 僕の足を引っ張ったりしない?」

「河南子は問題ないだろうな。ちなみに鷹文には審判をやってもらおうと思ってる」

「審判? なんでさ、男だろそいつ?」

「いーや、別に。なんとなくさ」

 

 昨日本人から軽くあの事は聞いたんだが、別に今詳しく話すことでもないしな。

 

「ま、いいけどね。僕は僕でバシッと決めてやるさ!」

「ところで春原」

「ん? なんだよ岡崎。僕の才能に嫉妬してるのかな?」

「なんでお前がここにいるんだ?」

「あんたが呼んだんでしょ!? 僕の幸せと引き換えにしてっ!! どーゆーことっすか!?」

 

 その顔面白いな、お前。

 

 

 

 

 

 

「おはよ、にぃちゃん」

「おう鷹文。ん? 一人か?」

 

 校門側から歩いてきた鷹文に尋ねてみた。てっきり智代や河南子と一緒だとばかり思ってたんだが。

 

「ううん、三人だよ。そこまではねぇちゃんと河南子、三人揃ってたんだけどさ。そこでねぇちゃんの知り合いに会ってね。

 なんだかよくわからないけど、河南子がその人の事をすっごい気に入っちゃったみたいでさ。先に僕だけやってきたって訳」

 

 誰だ? ここにいないメンバーってことは……。

 

「あー、あいつか……」

 

 向こうから女子三人組が歩いてくるのが見えた。

 

「鷹文っ! この子、すっごい面白いんだけど!」

「河南子、あまり失礼な事は……」

 

 智代の注意も我関せず。ことみを後ろから抱きしめた河南子はご機嫌だった。

 

「よう、ことみ。友達増えたみたいだな」

 

 俺の挨拶に、ことみはいつものやりとりを繰り返す。

 

「こんにちは朋也くん。河南子ちゃんとお友達になったの。鷹文くんともお友達になったの。まだ朝なのに、もう二人もお友達ができたの」

「そうか、良かったな、ことみ」

「うん。とっても、とってもうれしいの」

 

 それは周りが幸せになる様な……とてもいい笑顔だった。

 

「ありゃ? この子もあんたのなの?」

 

 河南子が良くわからん事を言ってきた。なので黙殺黙殺。

 

「どーゆー意味だそりゃ? あ、そうそう鷹文。お前審判できるか?」

「え? そのぐらいなら出来ると思うけど」

「なら今日の試合は頼んでいいか?」

「岡崎……お前」

 

 きょとんとした表情を向ける鷹文と智代の坂上姉弟。

 

「うん! わかったよにぃちゃん! 河南子、ほかの人たちにも挨拶しに行こっ!」

「うお!? なんだおめー? 急に元気になりやがって」

 

 咲くように笑顔を綻ばせた鷹文は、河南子を連れて渚達の方へ歩いていった。

 

「岡崎」

 

 その場に残ったのは俺と智代とことみの三人だけだ。

 

「ありがとう。本当に」

「……何の事だ?」

「ふふふっ」

 

 まったく、何でもないっていうのに。

 

「さ、俺達も。ほら、ことみも」

「んん?」

 

 約一名だけぽわぽわしていた。けど、それでいいさ。

 

「私達もみんなのところに行こう、一ノ瀬」

「うん、わかったの。智代ちゃん、朋也くん」

 

 

 

 

 

 

 

「あれ? 早苗さん、オッサンは?」

「はい、相手チームの方々を出迎えに行きました」

 

 皆の場所に戻ってくると、オッサンに引き連れられた他校の学生がやってくるところだった。

 

「聞けガキンチョ共! こいつらが本日のゲスト様、リトルバスターズだ!」

ページのトップへ戻る